当研究室の理念や日々行っている研究をご紹介します。
地盤工学

研究テーマ
地盤工学は人間活動を支える地盤の振舞と地盤を構成する土の性質を解明する学問である。その地盤を構成する土は自然材料であって,鋼やコンクリートのような人工材料ではなく,地域性がきわめて強い。そのため,研究テーマも大学が存在する地域の地盤と無縁ではあり得ない。中国地方を代表する地盤は,瀬戸内海沿岸地帯,特に山陽側沿岸に堆積している軟弱な沖積粘土地盤であり,昭和30年代後半から始まった臨海工業地域開発において軟弱地盤対策は技術は大きな課題となった。この分野において,当研究室は大きな役割を果たしており、その成果は国内および世界各地に存在する沖積粘土地盤の扱いに大きな示唆を与え続けている。
兵庫県南部地震以降、中国地方を含む西日本での地震発生が多くなっており、地域に密着した地震地盤工学の研究が求められている。広島県は斜面上に多くの住宅があるほか、切盛土で造成された道路が多く地震によって寸断される可能性がある。さらに、生産設備や社会資本が集中し地域の主要な産業を支えている臨海部の埋立地は、地震に対する備えが不十分な箇所が多い。当研究室は、芸予地震、鳥取西部地震における震災調査や堤防の液状化対策技術の研究に取り組んでおり、その成果を地域の防災計画の策定等に活かしきた。
中国地方を特徴づける今一つの地盤は風化花崗岩(通称マサ土)であり,降雨時に斜面崩壊を起こし易く,九州地方のシラスや関東地方の関東ロームと並び,取り扱い難い点で日本を代表する特殊土である。マサ土に対する研究も地方災害の立場からやはり重要な研究テーマである。特に1999年の集中豪雨による6.29災害の災害時には、県内各地で土石流や崖崩れが発生し、死者・行方不明者32名,損壊家屋582戸の被害を出している.当研究室では、新しい雨量指標による広域斜面崩壊予測手法を提案するとともに、簡易地盤調査技術に基づいた自然斜面の危険度評価方法の研究に取り組んでいる。
広島大学地盤工学研究室における今後の研究・教育活動における重点的な分野としては以下の3つの分野がある。
第一はわが国の沖積平野に広く分布する粘土地盤を対象とする軟弱地盤工学である。この分野は広島大学において伝統的に学会をリードしてきた研究テーマであり、1995年には400人規模の国際会議を開催し高い評価を得ている。瀬戸内海地域では沿岸域における大型建設事業は一段落しているものの軟弱地盤が問題となる建設工事は依然として多い。地盤特性の適切な評価によるコスト削減、軟弱地盤における性能設計、新たな地盤対策技術の開発、軟弱地盤対策技術の国際展開などが新たな研究課題である。
第二は地盤防災工学である。中国地方におけるまさ土斜面の安定問題は従来から取り組まれてきた課題であるが、近年豪雨時の土砂災害が多発しており、いっそう重要性が高まっている。また、兵庫県南部地震以降、中国地方を含む西日本での地震発生が多くなっており、地域に密着した地震地盤工学の研究が求められている。地盤工学研究室が主要な役割を果たしてきた災害軽減研究プロジェクト研究センターによる地域防災ネットワーク事業は、学内のみならず社会的にも評価を得ており、今後幅広く発展させることが必要である。
第三は沿岸域における水環境と地盤の相互作用に関する研究である。近年、沿岸環境の再生を目的として干潟や藻場の造成が進められているが、干潟表層地盤からの細粒分の流出など良好な環境を再生する観点から技術的に解明されていない課題がある。この問題は波浪や流れと表層地盤の力学的相互作用に関連し、地盤工学と海岸工学・水工学との境界領域の問題ということができる。